クレフと『レイアース』の登場人物との関係を考察するシリーズ「WITH」。
順不同で、思いつくままに書いてみようと思っています。特に長編ではあまり取り扱わない組み合わせを中心に書いていけたらいいなと。
「シリーズ」と言っても、長く続くかもしれないし一、二回で終わってしまうかもしれません。不定期にゆる~くやっていくつもりです。
第一弾はエメロード姫とザガート。
この二人が思い浮かんだのは、中編『韜晦』を書いていて、セバスチャンさんから「第8話はエメロード姫とザガートのことを思い出した」というコメントをいただいたときでした。『韜晦』では、強すぎるが故に偽れない想いを抱いてしまった自分自身を嘆く海ちゃんを描きましたが、「想いを偽れない」と言えば、確かに真っ先に浮かぶのはエメロード姫とザガートですよね。
この二人は「愛し合っていた」というのがもう既成事実になっていて、愛し合うまでの過程や、あの哀しい結末を迎えるまでの二人の葛藤といったものは原作をはじめ、どこにも描かれていません。まぁ、十中八九一目惚れだったんでしょうが。ただはっきりとわかっているのは、「二人の関係にクレフとランティスは気づいていた」ということ。
原作第2部の2巻で、クレフがランティスとの会話を回想する場面があります(ちなみにこのシーン、二人の師弟としての絆を感じられてとても好きです)。ここでクレフは、はっきりとは口に出さないもののエメロード姫とザガートが愛し合っていることを暗に指摘します。
それに対して、ランティスは酷く驚いた顔をします。このときの台詞が印象的です。「導師……あなたは、エメロード姫とザガートのことを……」と、ランティスは言いますが、これって結構色々な情報が含まれている台詞だと思うんですよ。
クレフが二人の気持ちに気づいていたという事実に対してランティスが驚く、ということは、
① ランティスもまた、二人が想い合っていることを知っていた
② でもそれをクレフが気づいているとは思っていなかった
③ 実はクレフも気づいていたということを、今初めて知った
ということですよね。
きっと、エメロード姫とザガートはお互いの気持ちを周りに対してはひた隠していたんだと思います。それは②からもわかります。ランティスは、自分はザガートの弟という立場だから二人の恋に気づくことができたけれど、他の人間が見たとしたら二人の秘められた想いは明らかではなかったのでしょう。当然のことかもしれませんが。「愛し合っていた」とは言ってもそれはお互いの心の中でだけの話で、実際の二人は触れ合うことは愚か、二人きりで話すことさえほとんどなかったのではないでしょうか。
原作第2部1巻の終わりに、ランティスがザガートとのやりとりを回想する場面があります。ランティスは、ザガートが心の片鱗を打ち明けられる数少ない人物の一人だったのでしょう。そういう話をザガートから聞くうちに、そして必然的にザガートと一緒にいる時間が多いであろうランティスが、そこに向けられるエメロード姫の視線を感じるうちに、自然と「もしかして…」と思うようになった、と推測しています。
では、クレフは。
クレフは、第2部2巻の回想の中で、ランティスがいなくなったことを教えに来たザガートとエメロードが一瞬見つめ合った後、切ない表情を浮かべています。クレフは人の心の機敏に敏い人でしょうから、そういう二人の『心』のやりとりを初めて見た瞬間に気づいてしまったんだと思います。でも、気づいてしまったことをずっと隠していたんでしょう。だからこそ、ランティスはクレフが二人の想いに気づいていると知ってあれだけ驚いたんだと思います。②と③からもそれはわかります。
クレフとエメロード姫、二人だけのやり取りはあの回想シーンしかありませんが、きっと二人はいい関係だったんだろうなと思います。まず、絵的に美しい(笑) 美男子美少女カップルですよね。
あの二人が『柱』と『導師』として君臨していたと思うと、当時のセフィーロはどれだけファンタジックな国だったんだろうかと、妄想が膨らんで仕方がありません。二人はかつての『セフィーロ』という国そのものを象徴するような存在ですよね。誰にも汚されることなく、永遠に子どもの姿を留めたまま、純粋に生き続ける。クレフとエメロード姫は、お互いにお互いしかわからない部分できっと繋がっていたと思います。その絆は、実の親子以上のものだったんじゃないかなぁ。
ところで、エメロード姫ってクレフよりも大きかったですよね?そういう印象があって、ググっていたらエメロード姫の身長を「125cm」としているサイトさんをいくつか見つけました。クレフの公式身長設定は120cmですから、やっぱりエメロード姫の方が多少(本当に多少ですが)大きかったということになります。
クレフの見た目に関しては、海ちゃんが初登場時に「どう見ても10歳前後」と言っているので、エメロード姫は11, 12歳前後なのかな?と思いますが……初登場時、海ちゃんたちは14歳でしたから、そう考えるとエメロード姫は幼く見えますね^^;
気になって調べたんですが、男の子の身長120cmって、7歳の平均身長でしたw これってどうなんだろう…確かに海ちゃんは「10歳前後」と言っていますけど、現実的なクレフの見た目は10歳どころじゃないってことですよね。
これから、うちのサイトではクレフの外見表記は「7歳」にしようかなぁ……なんて(笑)
ちなみに女の子の125cmは8歳の平均身長でした。
話が逸れましたが。
エメロード姫とザガートが想い合っていることを知って、それでも見守り続けていたクレフの立場を思うと、胸が張り裂けそうに辛いです。片やその誕生時から見守ってきた少女、片や大切な教え子。できることなら二人の恋路を応援したいし二人ともに幸せになってほしいけれど、その願いが叶うことは、セフィーロの崩壊に繋がってしまう……。クレフは眠れない日々を過ごしたに違いありません。
第2部2巻の回想で、クレフはエメロード姫のもとを去っていくザガートに「私に告げることはないか?」と聞いています。少し考えてザガートは「いいえ、何もありません」と答えていますが、あのとき、クレフはザガートに何を期待していたのでしょう。本心を打ち明けることか、或いは助けを求めることか。どちらももっともらしいですが、何か違います。
クレフは「私に”告げること”」と表現しています。「私に求めること」でも、「私に言いたいこと」でもなく、「私に告げること」。これはあくまでも私の想像ですが、この表現はクレフの優しさだったんじゃないでしょうか。
クレフは、ザガートが自分に何か言うことがあるとは思っていなかったのかもしれません。ただ、何かあればそれが何であっても聞いてやりたい。その想いが、あの「告げること」という表現になったのではないかと思います。
「求めること」「言いたいこと」と言ってしまえば内容は限定されますが、「告げること」と言えば、それはどういったことを告げられても文句は言えません。
うーん、考えれば考えるほど切ないです。
エメロード姫は消滅する際、魔法騎士たちに「ありがとう」と「ごめんなさい」を言ったとあります。そして、その「声」はフェリオとクレフのところにも届いていました。きっとエメロード姫は、フェリオにはフェリオだけの、そしてクレフにはクレフだけのメッセージも届けたのではと思っています。その言葉はクレフだけのもので、恐らく彼は永遠に誰にも明かそうとはしないでしょうが、その言葉がある限り、クレフはセフィーロを守っていくんだと思います。
長くなりました。まだ書き足りない気もしますが、この辺で切り上げて、小話に向かいたいと思います。
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