蒼穹楼

クレ海至上主義の管理人がおくる、妄想小説連載ブログ。

『WITH』 アスコット

語り

クレフと『レイアース』の登場人物との関係を考察するシリーズ「WITH」。
第二弾はアスコットでいきます。

この二人って……いい関係ですねw
かつては敵同士(まあ、厳密には『敵』ではなかったんですが)だったのが、やがて師弟関係になり、そして最後行き着くのは恋敵。
これだけ濃いのに、この二人が喋っているシーンは原作にはまったくありません。まあ、レイアースって脇役同士が喋っているシーン自体、そもそもあんまりありませんけどね。

『海の神殿』で魔法騎士たちと戦ったアスコットは改心し、海の助言もあり、魔獣たちと胸を張って生きていくことを決意します。あの後はザガートのいる城には戻らずセフィーロに戻ったと考えるのが自然ですが、そうしたとして一体いつ、あの巨大な体(笑)に変貌したのでしょうか。

クレフは、魔法騎士たちの戦いをずっと何らかの方法で見守っていたと思いますので、アスコットのことも知っていたはずです。それでなくてもクレフは「来るもの拒まず、去るもの追わず」な人でしょうから、セフィーロへ戻ってきたアスコットをその魔獣と共に受け入れたのでしょう。或いは、「魔獣使いであることで無下に扱われていたことを知らなかった、すまなかった」などと言ったかもしれません。

そうしてクレフたちと共にいることを選んだアスコットは、そのうちクレフに魔法を習います。このあたりのいきさつも、原作ではまったく描かれていませんが、あの時期は多忙に多忙を重ねていたに違いないであろうクレフが、果たしてアスコットに魔法を教えてやる時間を持てていたのか疑問ですね。

クレフはアスコットの海ちゃんに対する恋心に気づいたと思います。そのときに、クレフが無意識のうちに海ちゃんのことを考えていたりしたら……萌えますね!!(結局クレ海バカ)

『レイアース』は、第1部と第2部の間のセフィーロで起きた話が全く描かれていないので、ミステリアスすぎると思います。この間、クレフはあのセフィーロ城を建立するために魔法を使いすぎて倒れたりとか、そんなクレフを介抱したプレセアは気が気じゃなかったりとか、オートザムから戻ってきたランティスに、挨拶よりも先に「何をしている、早くお前も手伝え」とかなんとかクレフが言っちゃったりとか、そういう諸々があったはずなのに。

そんな妄想を、今日も小話という形にしてみました。興味のある方は、「続きを読む」からどうぞ。





『瑠璃色の約束』

 大きくため息をつくと、クレフは頭を抱えながら背を壁に預けた。数日前、この新しい『セフィーロ城』を築くために持てる魔法力のほとんどをつぎ込んだときに匹敵するほどの精神的疲労が、全身を気だるくさせていた。
 日に一度、魔導師や招喚士、剣闘師など、今のセフィーロに残された『力ある者』たちがこの大広間に集まり、セフィーロの現状について話し合うための会合が、いつしか開かれるようになっていた。たとえ『力ある者』たちと言えど、これほど荒廃したセフィーロを知る者はクレフを措いて他にいない。集った者が口を開けばそこから出てくるのは未来に対する不安と憂いばかりで、彼らが縋るものを求めるとすればその矛先は自然とクレフに向かう。

 取り除けるものならば彼らの不安を取り除いてやりたいと思う。だが集った者たちから容赦なく浴びせられる不安と畏怖の『心』は、クレフ一人で許容できる範囲を明らかに超えていた。会合を中止しようにも時間になれば人々は自然と集まってきてしまうし、そもそも突然「中止だ」などと言った日には、彼らの不安は増幅してしまうばかりであろう。やむを得ずクレフは聞き役に回り、できうるかぎり手を差し伸べようとするのだが、そんなことを毎日続けていれば、会合が終わるころにはクレフはすっかり疲弊してしまうのだった。

 もう、明日はさすがにこんなことをしている余裕はないかもしれない。クレフは人気のなくなった玉座の壁に寄り掛かったまま、力なくかぶりを振った。このまま『心』を消耗し続けることがセフィーロのためにならないことを、クレフはよくわかっていた。人々の『意志の力』で創り上げたとはいえ、この『セフィーロ城』の半分近くを支えているのはクレフの『意志』だ。クレフの『心』が弱まれば、今は最後の砦となったこの城が陥落しかねない。それだけは、次の『柱』が見つかるまでは絶対に阻止しなければならなかった。

 そこまで考えたとき、クレフは不意に大広間の扉の向こうに佇む人の気配を感じ、重たい首をなんとかもたげた。
 先ほどまでは鉛のように重く、壁から離すことさえできなかった体が、そうして来訪者の気配を感じた途端自然と覚醒する。今のクレフをそうしてまっすぐ立たせているのは、「弱ったところを周囲の人間には見せられない」という気概だけだった。
 クレフは一度軽い深呼吸をしてから、扉に向けて杖を傾けた。ギギギ、と、ただでさえ重苦しい気分を更に重くさせる音を立てながら扉がこちら側へと開かれていく。尋ねてきた人物が誰であるのか、クレフは扉の外に気配を感じたときから知っていた。やがて完全に開かれた扉の外に、一人の男のシルエットが映し出された。
 そのとき、クレフははたと瞬きをした。「一人の『男』」――?

 その男が、遠慮がちな歩みで広間の中へ入ってくる。玉座と扉とを繋ぐ真紅の絨毯をゆっくりと進み、半分を過ぎたところで男は立ち止まり、まっすぐにクレフを見た。かち合った瞳は、確かに見知った者のそれだった。しかしクレフは俄かには信じられず、眉間に皺を寄せて食い入るように男を見つめた。
「……アスコット、なのか……?」
 男は恥じ入るようにすっと視線を落とし、俯き加減に今にも消え入りそうな声で「はい」と答えた。その声もまた、間違いなくクレフが知るアスコットの声であったが、だからこそクレフは驚きを隠せなかった。「セフィーロの人たちを護る手助けがしたい」と申し出てきたときのアスコットは、クレフでさえ見下げなければならないほど、ほんの幼い少年の姿をしていたのだ。しかし今は逆に、クレフの背丈ではぐいと顎を持ち上げなければ視線を合わせられないほどにまで成長していた。

 突然訪れた変化に言葉もなく呆然と彼を見上げていると、突如アスコットが意を決したように顔を上げた。
「お願いがあるんです、導師クレフ」と彼は言った。
「……『願い』?」
「僕に、魔法を教えてください」
 そう言ったアスコットからは、身長の所為だけではない、相手を圧倒する気配が放たれていた。ただならぬ決意でもってその一言を発したのだということは明らかだった。しかしクレフは、怪訝な顔つきになってしまう自分自身を抑えられなかった。
「……私が『わかった』と言えると思うか」
 アスコットの瞳が、この日初めて揺らいだ。
「平常時ならば、考えてやらんこともない。だが、お前も知っているとおり、今のセフィーロは一刻を争う状態なのだ。生憎今の私には、魔法の修行をつけてやるような余裕は――」
「たったひとつでもいいんです!」
 アスコットがクレフを遮り、叫んだ。その声は広間全体に響き渡った。クレフは思わず口を噤んだ。
「このセフィーロも、そして導師クレフも大変な状態にあることは十分承知しています! つきっきりで修行をつけてほしいなんて言いません! たったひとつでいいんです、たったひとつでも、僕に魔法を教えてください! お願いします、導師クレフ!」
 一息に言い、アスコットは頭が床につきそうなほど深く腰を折った。まだその大きな体に慣れていないのか、よろめきながらの行動ではあったが、その必死さは全身から伝わってきた。クレフは完全にアスコットの言葉に気圧され、下げられた彼の頭を見ているしかなかった。

 今目の前にいるのは、ほんとうに、かつて少年の姿をしていたころの「アスコット」と同一人物なのだろうか。思わずそんな疑問を抱いてしまうほど、アスコットの姿には目を瞠るものがあった。体といい心といい、アスコットの中で大きな変化があったことは疑いようがない。ここまで必死に訴えてくる者を、どうして無下にできようか。そう思いながらも、クレフは眉間の皺を取ることなく一度自分自身を落ち着けるように呼吸を整えると、「アスコット」と静かに呼びかけた。
「なぜ、それほどまでに『魔法』を欲する? お前は『招喚士』であり、既に優秀な『魔獣使い』だ。このセフィーロを護りたいと努力してくれるのはありがたいが、お前の力があれば、『魔法』はなくとも『魔獣』の力を借りることで十分、このセフィーロを護れるだろう」

 クレフは人に魔法を授けることに関してはことに慎重だった。『魔法』は、使う者の『心』次第でその力を善にも悪にも用いることができる。それに、真に『心』強き者でなければ、本来は魔法を操るべき人間の方が逆に魔法に操られてしまうことにもなりかねない。そうして哀れななれの果てを迎えた魔導師を少なからず見てきただけに、クレフは求められたからと言って「はいそうですか」と魔法を授けるということは、決して行ってこなかった。

 やがて、アスコットがゆっくりと上半身を起こす。長い前髪の奥でつぶらな瞳が光っていた。
「強くなりたいんです」アスコットは言った。「友達の助けがなくても、護りたい人を護れるように、強くなりたいんです。……それが、ウミとの約束だから」
 クレフははっと息を呑んだ。アスコットが口にした、セフィーロでは聞き慣れない名前が、思いがけず心の琴線に触れた。刹那、あの哀しい戦いの一部始終が脳裏を走馬灯のように駆け抜けた。
 過酷な運命を強いた異世界の少女たちと、実際に言葉を交わしたのはほんの短い時間だけだった。それでも、三人の少女たちのことは今でも昨日のことのようにはっきりと思い出すことができる。その三人の少女の中で今アスコットが口にした名前を持つ少女は、流れる川を思わせる薄青の髪に大きな瑠璃色の瞳を持っていた。

 クレフは今一度アスコットを正面から見やった。モコナを通して『魔法騎士』たちの戦いは常に見守っていたが、そういえばあのとき、当時ザガートに与していたアスコットを改心させたのは海という名の少女だった。
「……そうか」
 すっと目を細め、クレフは独り言のように呟いた。アスコットがその体を急激に成長させたのも、魔法を習いたいと言い出したのも、すべては一人の少女の存在に起因していたようだ。

「――わかった。お前に魔法を授けよう」
「導師……!」
「ただし」ぱっと顔を輝かせたアスコットを遮るように、クレフは僅かに声を張り上げた。「今すぐに修行をつけてやることはできん。きちんと修行をつけてやるまでは、決して無闇に魔法を使おうとしてはならない。約束できるか」
 アスコットがきゅっと唇を噛み、問答無用とでも言うかのように、間髪容れずはっきりと頷いた。
「約束します。ほんとうに強くなるためだったら、どんなことでもやってみせます」
 クレフはじっとアスコットを見つめた。まだ幼さを残してはいたが、その瞳の輝きは揺るぎなく、発した言葉に嘘がないことは一目瞭然だった。

 トン、と玉座に杖をつく。巻き起こったつむじ風の中で目を閉じると、クレフは意識を集中させた。
『魔法伝承(アクセプト)!』
 カッと目を見開くと同時に、クレフは叫んだ。鋭い光が杖から発せられ、一直線にアスコットのもとへ向かっていく。目映いばかりの光がアスコットを包み、彼だけの『魔法』が彼を『選ぶ』。やがて光と風が収まると、アスコットはまるで珍獣でも見たかのようにぱちくりと目を丸くして自分自身の姿を眺めた。
「導師クレフ、この服は……」
「姿が変わろうとも、お前が『招喚士』であることに変わりはない」微笑んで、クレフは言った。「その恰好の方が、何かと都合が良いだろう。それに……先ほどまでのお前の恰好では、さすがに城の中を歩かせられんからな。私のもとで修行を積むというのならば、なおさらだ」
 クレフは杖を握った手の力を緩めながら、眉尻を下げて苦笑いを浮かべた。魔法と共にクレフがアスコットに授けたのは、『招喚士』としてアスコットが以前身に着けていたものと同じ衣服だった。体の大きさに合わせてところどころ改良されてはいるが、大きな帽子や、白地に緑や黒の装飾を施した点などは、以前彼が着ていたものとほとんど同じだった。

 片や、広間に入ってきた時点でアスコットが身に着けていた服は、およそ一介の『士』という称号を持つ者が着るような服ではなかった。薄灰色の一枚布で出来た、明らかに部屋着のような服は、知らない者が見ればアスコットを城の清掃係か何かと勘違いしてもおかしくないようなものだった。
「あっ、すみません! 急にこんな体になったから着られるものがなくて、あれはカルディナが、ラファーガが昔着てた寝間着だって言って貸してくれて……」
 急に狼狽したアスコットが、顔の前で手を振ったり、かと思えば長い前髪をいじったりと落ち着かない動作を見せ、顔をカッと赤らめた。そんな風に縮こまると、やはり彼は「あの」アスコットなのだと、何を見るよりも納得する。まるでその背丈が一気に何十センチも縮んだようにも見えて、クレフはくすりと笑みを溢した。
「わかっている」クレフは言った。「これからはその恰好で過ごすといい。魔法は、機を見て必ず教えると約束しよう。そのときまでは今までどおり、魔獣たちと共に城の見回りと守護を頼む」
「ありがとうございます、導師クレフ。……ほんとうに」
 深々と頭を下げたアスコットは、クレフと一度目を合わせ、赤ら顔ではにかんでから大広間を去っていった。
 厳選しているとはいえ、新たな教え子が増えることはクレフにとってはやはり嬉しいことだった。とりわけあの哀しい戦いを経たアスコットならば、伸びしろは存分にある。完全にその姿が見えなくなるまで、クレフはアスコットを見送っていた。


「まるで見違えるようでしたわね」
 ふと耳に心地よい声がして、クレフはアスコットが出て行った扉から自身の左側へと視線を移した。玉座からやや離れたところに通用口のような簡素な扉があり、そこからこちらへ向かってゆっくりと歩いてくる女性がいた。彼女の笑顔を見て、クレフはふっと肩の力を抜いた。
「プレセア。聞いていたのか」
「お声掛けしようかと思ったのですが、タイミングを逸してしまいまして……。ご迷惑でしたか?」
 不安げに表情を曇らせたプレセアの態度が意外で、クレフは一瞬目を見開くと苦笑いをしながらかぶりを振った。
「くだらんことを聞くな」
 言って、さっと杖を振るう。何もなかった玉座に椅子が二つ、姿を現した。ひとつはもう一方よりも小ぶりだった。
「ありがとうございます」
 プレセアが大きい方の椅子にそっと腰を下ろす。それを見て、斜めに向かい合うようにしてクレフもまた小さい方の椅子に腰掛けた。

 そうするとクレフは、先ほどよりも自分自身の『心』が幾許か回復していることに気づかされた。思えば、「魔法を習いたい」などという前向きな言葉を聞くのはずいぶんと久しぶりのことのような気がした。
「……皆、成長したようだ」
 クレフは今しがたアスコットが去っていった扉の方へ視線を投げ、目を細めた。
「ええ、ほんとうに」プレセアが頷く。「あの少女たちは、色々な意味でこのセフィーロを救ってくれたのですわ」
 「あの少女たち」と言ったプレセアの言葉を受け、クレフの脳裏には三人の少女の笑顔が浮かんだ。清らかな『心』を持った者たちだった。
「ああ……そうだな」とクレフは頷いた。


 一つひとつ試練を乗り越え、クレフが与えた防具、そしてプレセアが『エスクード』から創った武器を成長させるたびにはっきりと感じ取ることができたあの少女たちの『心』の成長に、目を瞠ったものだった。最終的に『魔神』を駆るようになる頃には、少女たちの顔つきが出逢ったときとはまるで異なっていたことを、クレフはよく覚えている。
 エメロードが『異世界』から招喚した少女たちを初見したときは、地獄に叩き落とされたかと思うほどの絶望感に打ちひしがれた。何しろ、三人が三人とも、揃いも揃って年端も行かぬ幼い少女たちだったのだ。
 いくら突然見知らぬ土地に招喚されたからといって、あのときの礼儀の「れ」の字も知らぬような少女たちの振る舞いに、クレフは呆れかえって言葉もなかった。とりわけ、あの「海」という名の少女の振る舞いは、想定外のことがあまりにも多すぎた。

 クレフははあ、と大きく息を吐き出した。
「それにしても、あの少女たちとの初対面には参った」
「え?」
「あの、ウミという名の少女がいたであろう。あれは私を見るなり、あからさまに子ども扱いしおってな。『そっちの方が子どもではないか』といきり立つのだ。こちらの話も聞かず、『東京へ帰らせろ』と、一にも二にもそればかりだった。ああ……私を『変態』呼ばわりしたのは、あの少女が初めてだな。魔法を授けたら授けたで、『さっさと教えろ』と身長で私を威嚇してくる始末……。かと思えば、教える前に魔法を勝手に発動させようと……」
 クレフははたと言葉を区切った。横顔に突き刺さるような視線を感じたからだった。見れば、プレセアがぽかんと口を開けて狐につままれたような顔でこちらを見ていた。
「……プレセア?」
 きょとんと首を傾げると、プレセアが一度瞬きをした。そのまま暫く、お互い見つめ合う時間が流れる。やがて何が引き金となったのか、プレセアが突然破顔し、くすくすと笑い出した。
「いえ……あなたがそんな風に笑っているところを、ずいぶんと久しぶりに見たものですから」
 すみません、と言いながら、プレセアの表情は申し訳なく思っているようにはまったく見えなかったが、クレフはそれを咎める気にはならなかった。プレセアに言われたことが、自分自身思いがけないことだったからだ。
「……私はそんなに笑っていたか?」
「ええ、とても楽しそうでしたよ」とプレセアは言った。「よほどウミと気が合ったんですのね」
「気が合った? 逆だろう、あれは……」
 眉間に皺を寄せて言い返そうとしたクレフだったが、プレセアが笑うのをやめないので、なんだか出鼻をくじかれた気分になり、諦めて小さなため息をつくだけにした。

 気が合う、というプレセアの言葉には断じて賛同できない。海との会話は、ほんの一部振り返っただけでも思わずがっくりと肩の力が抜けてしまうほど疲れるものだったし、元来騒がしいことを嫌うクレフにとって、騒々しい以外の何物でもない彼女の第一印象は、最悪と言っても過言ではなかった。
 それでも確かに、海のことを思い出すときは、それがたとえ苦笑いとはいえ自然と笑顔になることは確かかもしれない。接した時間は短く、今後もう二度と会うこともないであろう存在だとしても、彼女たちはすでにクレフの中では大切な教え子だった。

「……やはりもう、あの子たちには会えないのでしょうか」
 プレセアが切なげに呟いた。やや間を空けて、クレフは「そうだろうな」とはっきり肯定した。
「『魔法騎士』たちはエメロード姫の『願い』を叶え、その役目を終えた。もう、あの少女たちにはこちらの世界との繋がりを持つ理由はない」
 言ってから、クレフは「取り繕っている」と感じた。私は今、事実を事実のまま、そこに何の感情も付与せずに淡々と述べている。では、そこに一抹の感情を混ぜたとしたらどうなるのだろう。クレフはすっと首を伸ばし、天を仰いだ。広く開いた天井の窓から、荒れ果てた空が見える。昔は惜しげもなく見えていた青空が恋しかった。

「……礼を……」
「え?」
「一言『ありがとう』と言う機会があればいいとは、私も思う」
 叶わぬ願いだがな、と続けると、クレフはプレセアに向かって曖昧に笑んだ。一瞬目を丸くしたプレセアだったが、やがて表情を緩めると微かに頷いた。心なしか、細められた目尻が潤んでいるように見えた。
「そうですわね」
 そのまま、二人は微笑み合った。『柱』を失ってから続いていた張り詰めた空気漂う日々の中で、それは久々に訪れた、休息らしい休息の時間だった。




王子様は魔法使い 完





隠れクレ海っていう。
海ちゃんは、東京に戻ってからずーっとクレフのこと考えていたんだろうし(希望的観測ですが)、クレフにも海ちゃんのことを考えていてほしいなぁと思って書きました。クレフとアスコットのやり取りを中心に書くつもりが、結局クレ海に…w
ここまで読んでくださってありがとうございました^^

2013.01.29 up / 2013.07.12 revised




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Author:篁かすみ
篁かすみ(たかむら・かすみ)と申します。
都内某所にひっそりと生息。
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