蒼穹楼

クレ海至上主義の管理人がおくる、妄想小説連載ブログ。

諱 20. 風

海誕企画★2013

この五年を語るには、一日や二日ではとても足りない。海にとっても、イーグルにとっても。

本文は「続きを読む」からどうぞ。





 海は零二と繋いでいない方の手をそっと広げた。そこにはあの、今わの際にクレフが残した指輪が握られていた。かつての主を失い、それからさらに五年が経った今となっても、それは色褪せることなく輝き続けている。
 何度捨てようと試みたかわからない。東京へ戻ってすぐのころは、地域の「燃えないゴミ」の日になるたびにゴミ捨て場へ足を向けたものだった。この指輪さえ捨ててしまえば、セフィーロとの繋がりを示すものはなくなる。何もかも忘れて慎ましやかに生きていこうと、何度も思った。けれど結局捨てることはできなかった。それどころか、いつも肌身離さず持ち歩き、その存在を常に意識していた。セフィーロのことを――そしてクレフのことを忘れたことなんて、一日たりともなかった。
 ようやくそのことを認められたような気がして、海はふっと自嘲気味に笑った。
「結局、どんなにあがいてもここに戻ってくる運命だったのかもしれないわね」
「え?」
 零二がきょとんと首を傾げた。海はその場で膝を折ると、東京タワーでそうしたように真っすぐ正面から零二を見つめた。その瞳も髪の色も、零二はクレフと瓜二つだった。
「零二、よく聞いて。ここは、あなたのお父さんが生まれ育ったところなの。あなたのお父さんはね、この『セフィーロ』で一番強い魔法使いだったのよ」
「まほうつかい?」
「そう」とうなずき、海は大木を見上げた。「お父さんはね、ちょうどこの場所で、お母さんを護って……死んだの。だから、この木にはお父さんが眠っているのよ」
 零二もまじまじと大木を見上げた。木の迫力に気圧されているようにも見える。無理もない、と海は目を細めた。このような大木や、これほど自然の温もりにあふれた場所は、零二の生まれ育った東京にはなかったのだから。

 海はわが子を呼んだ。
「お父さんは、あなたにふたつのものを残したわ。ひとつは、この指輪」
 海は指輪を乗せた掌をそっと零二の前に差し出した。それを見て、零二の目がきらりと輝いた。
「きれい……」
 子どもはいつだって、物珍しいものや光り輝くものを見るのが好きだ。海が手にしている指輪は、その二つの条件をどちらも満たしている。零二は食い入るように指輪を見つめた。けれど手を出すことはせず、どこか不安げなまなざしで海を見た。
「これ、おとうさんのなの?」
 答える代わりに、海は零二の右手を取った。五歳になったばかりの零二の手は、目いっぱい広げてもようやく海の掌を上回るほどの大きさしかない。
「もうひとつ、お父さんが残したものがあるわ」と海は言った。「あなたの『諱』よ」
「いみ、な?」
「あなたにはね、『零二』とは違う、『ほんとうの名前』があるの。お父さんがくれた、『ほんとうの名前』」
 クレフのものだった指輪は、今の零二の指ならば軽く三本は入ってしまいそうなほど太い。それを海は、けれどためらうことなく零二の右手中指にそっとはめた。
「あなたのほんとうの名前は……『クレフ』よ」

 零二の指に指輪がはまった瞬間、それは起きた。指輪の宝玉がまばゆいばかりの光を放ち、零二と海を包み込んだ。それは目を焼くほど強い光だったけれど、海は不思議と、その輝きを瞬きもせず見つめることができていた。一方零二はぎゅっと目を瞑っている。やがて光が収まると、指輪は零二の指の太さにちょうどいい大きさに収縮していた。海は零二の肩をぽんと叩き、目を開けるよう促した。恐る恐る、片目ずつをゆっくりと開いた零二は、自分自身の指にはまったものをまじまじと眺めた。
「……小さくなった」
「そうね」と海は言った。「その指輪は、お父さんも――」
 あなたのように、いつも右手の中指につけていたのよ。そう言おうとした海の声は、突如地面から吹き上げた風に掻き消された。海は思わず悲鳴を上げた。風は海の長い髪を掻き上げ、大木を揺さぶった。その風の動きと木の葉の揺れる音に誘われるように、海と零二は首をもたげた。
 そしてそのとき、確かに『声』が聞こえた。
『ありがとう、ウミ』

 海は言葉もなく、ぽかんと口を開けたまま、穴が開くほど大木をただじっと見つめた。前に耳にしたときから五年も経っているというのに、その声が誰のものなのか、はっきりとわかった。
「今の、おとうさんの声?」
 呆然としていた海は、はっとして零二を見やった。
「わかるの? お父さんの声だって」
 困惑と動揺を隠さずに、海は問うた。
「やっぱり、そうなんだ」と零二は破顔した。「すごくやさしい声だったよ。おとうさん、きっとおかあさんのことが大好きだったんだね」
 きっぱりと言い切った零二を前に、海は言葉を失った。
 零二がまだお腹の中にいたとき、この子を産むべきかずいぶんと迷った。産んでからも、果たして自分の選択は正しかったのかと思い悩むことが少なくなかった。自分は母親としての責務を果たせていないのではないか、零二を不幸にしているのではないかという後ろめたさが、ずっと心のどこかにあった。けれどこの瞬間、そのすべてが吹き飛んだ。海を救ったのはほかでもない、わが子の言葉だった。海は強く思うことができた。この子を産んで、ほんとうによかったと。
「零二……!」
 海は零二の小さな体を引き寄せ、力いっぱい抱きしめた。零二が「苦しい」と訴えても、海は腕の力を緩めなかった。
 たとえ顔を見合うことはなくても、クレフと零二は『心』で繋がっている。零二はクレフの生きた証なのだ。クレフが私を愛してくれたということの証なのだ。

「海ちゃん……?」
 不意に地面を踏みしめる音がした。はっと顔を上げると、懐かしいものが目に飛び込んできた。薄い桜色の髪に、小さな顔の中にある二つの燃えるような真紅の瞳。少し大人びただろうか。けれどそこには、よく知った面影がはっきりと残っていた。
「……光」
 その名を呼ぶと、彼女はくしゃっと顔を歪めた。
「ランティスが教えてくれたんだ。海ちゃんの気配がするって。それで……」
 そこまで言って、光の顔がはっと強張った。その理由は明白だった。海の腕の中にいた零二が、光の声に反応して彼女の方を振り向いたのだ。クレフを知っている人間が零二を見て、驚かないはずはないと思っていた。
「ク、レフ……? そんな、まさか……だって、クレフは」
 海と零二を交互に見て、光はひどく狼狽した。その光の様子を見た零二もまた、訳がわからないといった心細そうな表情で海を見上げる。海は黙って零二の頭を優しく撫でると、細い肩をそっと自らの方へ引き寄せた。さらりと揺れた薄紫色の髪も、大きな蒼い瞳も、零二はクレフそのものだった。
「そう、この子は『クレフ』よ。東京では『零二』として育てていたけれどね」と海は言った。「私とクレフの子なの」
 光が大きく目を見開いてまじまじと零二を見る。一度ゆっくりと瞬きをした光の目からは、大粒の涙がこぼれ落ちた。
「海ちゃん……」
「水臭いですわ、海さん」
 そのとき、光の後ろから別の声がした。光が振り返る。そこにはもう一人の親友が立っていた。眼鏡を掛けていない瞳は、光のそれと同じように濡れていた。
「五年間、一度もお顔を見せてくださらないなんて」
 わなわなと震えだした唇を、海はどうすることもできなかった。腕の中で零二が戸惑っている。当然だった。あの日以来、海は一度も泣いていないのだから。零二が母親の涙を見るのはこれが初めてなのだから。
 光と風が、同時にわっとこちらへ向かって駆けてくる。すぐそばでくずおれた二人と海はひしと抱き合い、子どもに戻ったかのように号泣した。そんな三人に囲まれた零二も、最初こそ困惑していたものの、それぞれに泣きじゃくる者たちに囲まれて感化されたのか、しまいには大きな声を上げて泣き出した。四人分の泣き声が、『精霊の森』に木霊した。

 どれほどそうしていただろう、ようやくそれぞれに気持ちが落ち着いてきたころ、海の耳は駆け寄ってくる足音を捉えた。それは光と風も同じだったようで、二人はその場で立ち上がり、辺りをきょろきょろと見回した。海は零二のそばで膝を折ったままだった。
「あ!」
 突然、光が声を裏返らせた。彼女の視線は一点に向けられている。その先を追いかけて、海は瞠目した。
「……イーグル」
 五年前にはそれほど強く感じなかった威厳がずいぶんと出ていて、髭も生えていたけれど、一目でそれがイーグルだとわかった。かなり遠くから走ってきたようで、10メートルほど離れたところで立ち止まったイーグルの息はすっかりあがっていた。乱れた髪を気にもせず、イーグルは思い詰めた瞳で海を真っすぐに捉えた。

 一瞬の間があった。その直後、イーグルの顔が潰された空き缶のように歪んだ。そうかと思った刹那、彼はこちらへ向かって駆け寄ってきた。目の前でしゃがんだイーグルは、ためらいも見せずに海を抱いた。彼の腕の中は、苦しかった。
「ウミ」とイーグルは言った。「どうか僕を恨んでください。あなたの気が済むまで」
「イーグル――」
 海は抱き返そうとしたけれど、イーグルはまるでそれを遮るかのように素早く海から離れた。そして今度は、そばで唖然として彼を見上げていた零二と向き合った。
「僕はイーグルといいます。イーグル・ビジョン。君の名前を教えてくれますか」
 零二は明らかに困惑していて、イーグルの問いには答えず海のことを見上げてきた。突然現れ、母親を抱きしめて訳のわからないことを言った男のことを警戒しているようだった。海は「だいじょうぶ」という意味を込めてこくりとうなずいた。すると零二はごくりと唾を呑み込み、緊張した面持ちでイーグルを見た。
「れいじだよ。りゅうざき、れいじ」
「レイジ」とイーグルはかみしめるように言った。「いい名前ですね」
 イーグルは一瞬目を細めた。零二が複雑な表情を浮かべる。喜びたいけれど簡単には喜べない、そんな気持ちが表れていた。零二の視線を受けたイーグルは、きゅっと唇を結ぶと零二の肩に片方の手をそっと置いた。
「レイジ、よく聞いてください」
 静かに、それでいてよく通る声でイーグルは言った。
「ずっと、君に会って謝りたかった」
「あやまる?」と零二は瞬いた。「どうして? ぼく、おにいちゃんのことしらないのに」
「君が知らなくても、僕はよく知っているんですよ」と言って、イーグルはほろ苦く笑った。「なぜなら、僕が君のお父さんを」
「イーグル」
 そのときようやくイーグルが何を言わんとしているのかを悟った海は、咄嗟にイーグルの肩をぐいと引いた。はっとしてイーグルが顔を上げる。海はじっと彼の目を見つめ、黙ってかぶりを振った。
「ですがウミ、あのときのことは」
「いいのよ、イーグル」
 海は目を細めてほほ笑み、零二の背中にそっと手を当てた。
「クレフは今、ここに生きているわ」
 イーグルははっと息を呑んだ。見開かれたその枯茶色の瞳が揺らぐ。海は涙をぐっと堪え、こくりとうなずいてみせた。
 セフィーロに来て、わかったことがある。彼の血を受け継いでいるのだから当然かもしれないけれど、零二の『気配』はクレフのそれと瓜二つだった。クレフの体は朽ちてしまったけれど、彼の魂は、彼の血は、零二がそこにいる限り永遠に生き続ける。クレフはこれからも、私たちと共に生きていくことができる。クレフは彼の言葉どおり、私たちを見守ってくれている。

「海さん」
風が静かに口を開いた。
「フェリオをはじめ、みなさん会いたがっています。よろしければ、お城へいらっしゃいませんか?」
「おしろ? いってみたい! おかあさん、いこう!」
 真っ先にはしゃいだのは零二だった。子どもの笑顔というのは、それだけで無条件に場を明るくする。一同は一瞬顔を見合わせ、そして同時に破顔した。
「そうね。行きましょうか」と海は言った。
「零二くん、お姉ちゃんたちと一緒に行こうか」
 光が零二に向かって手を差し出す。許可を得るようにちらりとこちらを見やった零二に、海は笑顔でうなずいた。すると零二はぱっと表情を輝かせ、光のもとへ駆け寄った。そして両方の手を光、風とそれぞれに繋いで歩き出した。

 光の気遣いが嬉しかった。彼女は、海がイーグルと話をする時間を取れるようにと気遣ってくれたのだろう。そんな光の心を敏感に察知した風もまた、乗ってくれたようだった。三人の後ろを、海は自然とイーグルと二人で並び歩く形になった。
 年を重ねてもその紳士っぷりは不変なようで、海のスーツケースはイーグルが持ってくれた。「素敵なケースですね」と彼が言ってくれたことが、海の胸を熱くした。そのスーツケースは、せっかく両親から贈られたものだというのに、五年前に一度、それもほんの一時使用されただけで、あとはずっと押入れの奥で埃を被っていたのだった。

 光と風に連れられて歩く零二は本当に嬉しそうで、海の口元は自然とほころんだ。光はもともと子どもに懐かれる性格をしているし、風も子どもの扱いには慣れているように見える。ひょっとしたら、もうフェリオとのあいだに子どもを儲けているのかもしれない。連れだって歩く三人の様子を見ながら、海は切り出すタイミングを探っていた。
「僕は去年、父の後を継いでオートザムの大統領を拝命しました」
 ところが、口火を切ったのは意外にもイーグルの方だった。
「そうだったのね」
 海はイーグルを見上げてほほ笑んだ。
「おめでとう。お父様は、どうしてるの?」
「存命ですよ」とイーグルは言った。「後を継いだと言っても、完全に院政を敷かれています。暢気なものですよ。自分が裏で指示を出せば、息子が汗水流してそのとおりに遂行してくれるんですから」
「楽しそうだわ」
 くすくすと笑みがこぼれる。こうしてもう一度『精霊の森』を歩くことがあろうとは、つい昨日までは考えてさえいなかった。――いや、考えないようにしていた、と言うべきかもしれない。

「……あの人は、助かったの?」
 会話が途切れたところで、海はイーグルの方を見ることなく尋ねた。ぴくり、と彼の拳が揺れる。沈黙が流れても、海はじっとイーグルの返答を待った。「あの人」が誰のことを指しているのか、説明する必要などないはずだった。
「いいえ」
 やがてイーグルは、声のトーンを落として静かに言った。あらゆる感情を押し殺したような口調だった。
「救命自体は成功したのですが……目を覚ました後、シルヴィアは自ら命を絶ちました」
「……そう」
「約束を守れなくて、すみません」
 海は驚いてイーグルを見た。彼の長い睫毛が、頬に深い影を作っている。この人もこの五年間、苦しみぬいてきたのだ。急に切なさが湧いた。それを振り切るように、海はふるふるとかぶりを振った。
「あの人が選んだ道なら、仕方ないわ」
 今一度流れた沈黙は、思ったほど居心地の悪いものではなかった。思いなしか、心が軽くなったような感じがする。あの日傷ついたのは私だけではないのだ。当たり前なのにそんなことにも気づけなかった、この五年間の自分の幼さを恥じた。

「僕がこんなことを言う資格はないんですが」
 イーグルが沈黙を破って言った。見上げると、イーグルも海を見た。
「ほんとうに、ありがとう。もう一度、この世界へ来てくれて」
 もう二度と会えなかったらどうしようかと思いました。そう言って、イーグルは困ったように笑った。その表情を見て、海も同じように口元を緩めた。
「忘れたことなんて、一日もなかったわ」
 ありとあらゆることが、今でも昨日のことのように蘇る。歩く場所すべてに思い出があった。クレフと一緒にブイテックを摘んだ木。クレフにちょっかいを出して逃げ回った森。思いを通わせ合ったクレフと、手を繋いで歩いた道。
「あなたと話したいことが、たくさんあります」
 イーグルが言った。よく見ると、目尻の皺が増えたようだ。その皺が、流れた月日の長さを知らせる唯一のものであるように感じられた。
「私もよ」
 この五年を語るには、一日や二日ではとても足りない。海にとっても、イーグルにとっても。

「おかあさん、見て、見て!」
 もうだいぶ先を歩いていた零二の声に、海は視線を前へ戻した。すると、すぐ目の前に見えてきたセフィーロ城を背景に、零二が全身を使って飛び跳ねていた。
「本物のおしろがあるよ!」
 自然と笑い声がこぼれたのは言うまでもない。海は歩みを早めて零二のもとへ向かうと、そばで膝を折り、零二に近い目線の高さからセフィーロ城を見上げた。
「ねえ、零二」
 海は零二の瞳を覗き込んだ。
「セフィーロで暮らしたい?」
「え?」
 零二は目を丸くして海を見た。光や風、イーグルの視線も感じたけれど、海は零二だけをその瞳に映していた。
「お父さんの生まれ育ったこの世界で、暮らしたいと思う?」
 彼が何と答えるのか、海はわかっていた。初めてこの世界に足を踏み入れた人間だとは思えないほど、零二はもうすっかりセフィーロの空気に馴染んでいた。
 零二は一度海から視線を外し、光、風、イーグルを見て、そして最後にセフィーロ城を見上げた。その横顔がすでに強い『意志』を窺わせて、海は思わず見惚れた。
「うん」と零二は力強くうなずいた。「ぼく、ここで暮らしたい。それで、おとうさんみたいな強いまほうつかいになりたい」
 今一度海を見た零二の瞳に、迷いはなかった。海はそんな零二をそっと抱きしめ、生涯でたったひとり、心から愛したひとと同じ色の髪を撫でた。
「忘れてはだめよ、零二。あなたの『諱』を」
「『いみな』って、『クレフ』のこと?」
「そう。あなたの『ほんとうの名前』で、お父さんと同じ名前よ」
「うん、わかってる。ぼく、『クレフ』がぼくの名前になっても、いいよ!」
 初めて見る、彼曰く「本物のお城」を目の前にして、零二は心底興奮しているようだった。果たしてきちんと人の話を聞いているのか怪しかったけれど、はしゃぎながら光と風の方へ駆け寄っていく零二を見ると、もっと早くここへ連れてくるべきだったかもしれないとさえ感じ、嬉しくなる。

 セフィーロから手紙を出すことができたらいいのに。海はそう思った。ここから両親に向けて、この五年間で初めての手紙を出したい。私は幸せにやっていますと、両親に伝えたい。
 確かに辛い毎日だったけれど、この五年間、不幸だと感じたことは一度もなかった。零二がいてくれるだけで、海にとっては毎日が宝物だった。零二の存在は、夢のようだったクレフというひととの日々が現実に存在していたのだということを示してくれる、かけがえのないものだった。
 私が愛し、私を愛してくれたひとがいる。その記憶だけで生きていける。今なら心からそう思う。
 五年ぶりに訪れるセフィーロ城を、改めて見上げた。
「ただいま」
 その言葉は、思った以上にしっくりくる言葉だった。はしゃいだ零二の――そして『クレフ』の右手で、小さな指輪が大きな存在感を放ってきらりと輝いた。




諱 完





『諱』はこれで完結です。

元となったのはにこにこさんからのリクエストで、
「クレフに想いを伝えられない海をイーグルが慰めているうちに密事に発展! 寂しさゆえにダメだとわかりながら密事を繰り返してしまう2人 クレフはもちろんそれに気付いていて……」(一部抜粋)
というものでした。

イーグル×海のカップリングに対する反応がすごくてびっくりしました(笑)好意的なものが多かったのでほっとしてます。
私としても、書いてみて意外にもしっくりくる二人に驚いた次第です。

書き直しながら、いろいろと至らない点の多さに悶々としました。
タイトルを含め大々的に書き直すことも考えたのですが、結局は微調整に留めての再掲となりました。
微調整といっても、かなり書き直していますが。ただ全体的な流れは変えていないです。
一番変わったのは16話かな? クレフ小さくなってないですし、話し相手がグリフォンになってますし。

あまりいろいろ書くとぼろが露見しそうなので、この辺にしておきます(苦笑)
最後までお付き合いくださったみなさま、ありがとうございました。

この作品のテーマソングはMISIAの『恋は終わらないずっと』です。
特に最終話の海ちゃんの気持ちにぴったりなので、よろしければ聴いてみてくださいね。

にこにこさん、すてきなリクエストをありがとうございました^^

2013.05.19 up / 2014.01.05 revised




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Author:篁かすみ
篁かすみ(たかむら・かすみ)と申します。
都内某所にひっそりと生息。
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