蒼穹楼

クレ海至上主義の管理人がおくる、妄想小説連載ブログ。

縁(えにし)

短々編

高円宮典子さま婚約内定の発表を受けて、衝動書きしてしまいました。
よろしければ、本文は「続きを読む」からどうぞ。





「ロマンチックねえ」
 うっとりと私がひとりごつと、斜向かいでむつかしい資料の束とにらめっこをしていたクレフが、顔を上げてきょとんとした。私はふふ、と肩を竦めた。
「東京でね、結婚が決まった女王さまがいるの。お相手は十五歳年上の出雲大社の神職の男性で、それだけでもすごいのに、実はこの二人、先祖をたどれば同じ天照大御神に行き着くんですって。そんな二人が惹かれ合って結婚するなんて、まさに運命って感じじゃない?」
 クレフは眉間に深く寄った皺を隠そうともしなかった。たぶん、私の話の半分もわからなかったのだろう。無理もないことだけれどその正直な反応がおかしくて、私はくすりと笑った。
「簡単に言えば、別々の世界で生きていた二人の男女が結婚を決めたんだけど、その二人の先祖は実は同じ神様、それも、私たちの国の礎を築いた神様につながるっていうことよ。それぞれ違う立場から国を支えてきた二つの家系が、またひとつに結ばれるの」
 私は膝に置いた雑誌に目を落とした。仲睦まじく見つめ合う二人の写真がカラーで掲載されている。見ているだけでほほ笑ましい、似合いの二人だと思う。
「『縁(えにし)』って、こういうことを言うのよね、きっと」
 東京タワーへ向かう途中、「一冊丸ごと婚約特集」と銘打たれたその女性誌をコンビニで見つけ、迷うことなく手に取った。女性誌なんて普段は立ち読みすらすることもない。完全な衝動買いだったけれど、いわゆるゴシップ的な記事よりも意外と真面目な記事が多く、特に出雲国造の歴史についてはとてもわかりやすく書かれていて、勉強になった。この女性誌を読んで、二人の婚約がいかに運命的なものであるかがよくわかった。二千年を超える昔に二つに分かれた血筋の子孫が現代において出逢い、恋に落ちて結婚を決めるなんて、まさにまるで神話のような話だ。

「そうだろうか。私には、さほど運命的とは思えない話だがな」
 ところがクレフは、そんな私の感想を一刀両断した。あまりにも直截な言い方に、私は彼を横目ににらんだ。
「あなたって本当に、情緒的なものの捉え方ができない人よね。こんな運命的な話を運命的とも感じられないなんて、人生半分以上損してるわよ」
「仕方あるまい。比べ物にもならないほど運命的な逸話を知っているのだから」
「え?」
 不意にクレフの手が伸びてきて、肘掛けに置いていた私の手に触れた。一回り以上も大きな手に包まれて、厭でも鼓動が波打った。
「私は745年という時を生きて、ようやくおまえにめぐり逢った」とクレフは言った。「私たちは文字どおり、住む世界が違う。過去のどこかで何かが少しでも変わっていれば、出逢うどころかすれ違うことさえなかった二人だ。だが私たちは出逢い、惹かれ合った。そして今、こうして同じ空の下に集い、時をともに過ごしている」
 クレフは私の手を持ち上げ、甲にそっと唇を寄せた。
「これほど運命的な話が、ほかにあると思うか?」
 力強い瞳に真っすぐ見つめられて、加速度的に体温が上がっていく。こういうときに気の利いた切り返しができるほど、残念ながら私はまだ人間ができていない。きゅっと唇を結び、小さくかぶりを振るので精いっぱいだった。そんな私を見て、クレフは満足そうに目を細めた。
「続いていけばいいな、私たちの縁も。おまえたちの世界の女王に負けぬよう、三千年、四千年と」
「ええ……そうね」
 どちらともなく、重ねた手指を絡め合う。先に身を乗り出したのはクレフだったのか、それとも私だったのか。後ろに伸びた二人の影がひとつに溶け、クレフの手が私の頬を優しく包む。そっと目を閉じると、唇が優しく触れ合った。まるでここから続いていく縁を思わせるような、温かい口づけだった。




縁 完





もーなんか、天照大御神の時代から縁があるカップルなんて、本当にすてきですよね。
ニュースを拝見したら、とてもお似合いのお二人でした。典子さまの方が強そうでしたけど(笑)
こんな形ですが、お祝いの気持ちを込めて。

ここまで読んでくださってありがとうございました^^

2014.05.27 up




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